登記は通常、物権変動に対抗力を与えるためになされます。これを本登記(終局登記)とよびます。
一方、それ自体は対抗力を与えるものではなく、将来の本登記にそなえて、その順位を保全するためになされる登記があります。これを仮登記とよびます。
仮登記をしておくと、その後に他人名義に登記が移転されても、仮登記を本登記に改めることによって、その本登記の効力が他人のした登記の効力に優先します。
仮登記には、次のように2種類があります。
(1) 物権保全の仮登記(1号仮登記)
権利の変動は生じているが、登記申請のために登記所に提供すべき情報を提供することができない場合になされる仮登記です(不登法105条1号)。
たとえば、農地の売買契約において農業委員会の許可(農地法3条)を得て所有権がすでに移転しているが、許可書を添付できない場合に仮登記が用いられます。
(2) 請求権保全の仮登記(2号仮登記)
権利の変動を目的とする請求権(始期付き、停止条件付きでもよい)を保全する場合になされる仮登記です(不登法105条2号)。
たとえば、農地の売買契約においては農業委員会の許可を得ることによって農地の所有権を移転することができますが、許可を得られる前に仮登記をしておくことによって所有権移転請求権を保全することができます。