民法第4編「親族」および第5編「相続」は、家族関係を規律するためのルールを定めており、合わせて一般に家族法(かぞくほう)と呼ばれる。
成年後見制度
行為能力の制限に関する制度は、精神上の障害(知的障害・精神障害・認知症など)がある者の支援という、より広い枠組みの一環として位置付けることができる。そのような枠組み全体を指して成年後見制度(せいねんこうけんせいど)と呼ぶ。
成年後見制度は、行為能力の制限に関する制度にとどまらず、法定代理や任意後見契約に関する制度をも含むが、単なる未成年者は対象としない。もっとも、精神上の障害のある未成年者であれば支援の対象となりうる。
〔参考〕平成11年改正
平成11年改正により、「禁治産」「準禁治産」の制度は廃止され、「禁治産者」「準禁治産者」「禁治産宣告」「準禁治産宣告」「無能力者」という表現・手続きは、それぞれ「成年被後見人」「被保佐人」「後見開始の審判」「保佐開始の審判」「制限能力者」(後に「制限行為能力者」)という表現・手続きに改められた。また、新たな類型として補助が新設された。補助の類型は、軽度の精神上の障害がある者を対象とし、手続き上、本人の意思がもっとも尊重されている。
民法は当初、準禁治産宣告の対象として心神耗弱者、聾者、唖者、盲者および浪費者を挙げていた。その後、昭和54年改正によって聾者、唖者、盲者が削除され、さらに平成11年改正によって「心神耗弱」の文言が改められ、浪費者が除外された。現在の保佐という類型においては、事理弁識能力が著しく不十分であることだけが被保佐人の要件である。
〔参考〕制度の沿革
平成11年改正によって従来の禁治産・準禁治産制度は廃止され、それに代わる新たな制度としていわゆる成年後見制度が導入された。
旧制度においては、①「禁治産」「準禁治産」「無能力」という用語は差別的であり偏見を招くこと、②禁治産宣告・準禁治産宣告が戸籍に記載されるため、本人のプライバシーが守られないこと、③旧制度の2類型では内容が硬直的すぎて高齢化社会への対応ができないなどの問題が指摘されていた。
そこで、新制度においては、高齢者福祉および障害者福祉の充実といった観点から、①差別的用語の撤廃、②戸籍への記載の廃止と成年後見登記制度の導入、③各人の残存能力に応じた柔軟な制度設計といった改善がなされている。