このページの最終更新日 2020年11月6日
抵当権も物権の一種であるから、取引の安全のために公示の原則(権利の変動には外部から認識することができる方法を伴うことを必要とするという原則)に服する。
抵当権に適した公示方法は登記または登録である。抵当権は、非占有担保であるから、占有を公示方法とすることはできない。
したがって、登記・登録によって権利関係を公示することができる財産だけが抵当権の客体となることができる(後述)。
また、抵当権は債権担保を目的とする権利であるから、その効力が及ぶ範囲も抵当権が担保する債権(被担保債権)の金額によって限定される。
したがって、被担保債権とその金額も特定して抵当権とあわせて公示する必要がある。
公示の原則は、抵当権の客体となる財産が特定されていることを要求する。
これは、債務者の全財産を目的とする一般抵当は認められないことを意味する。
前述のように、抵当権の客体となる財産は登記・登録といった公示方法に適したものでなければならない。
民法は、不動産、地上権および永小作権を抵当権の客体として定める(369条1項・同2項)。これらの財産には登記制度が用意されている。
民法上の抵当制度が主に土地を対象としているのは、農家に対する金銭貸付のための担保制度とすることが想定されていたからである。
抵当制度を企業の資金調達のための担保制度として機能させるためには、その対象を土地以外の生産手段にも広げることが望ましい。そこで、各種の特別法が制定されている。
たとえば、企業設備を一括して財団とし、その上に抵当権を設定することを認める財団抵当制度が各種財団抵当法によって設けられている。
また、特定種類の動産(農業用機械、自動車、建設機械など)について登記・登録制度を整備して抵当権設定を可能とする動産抵当制度も特別法によって存在する。しかしこれは、動産一般を抵当制度の対象として認めるものではない。