このページの最終更新日 2020年11月7日
不動産に関する物権の変動は、その登記をしなければ第三者に対抗することができない(177条)。
抵当権も、不動産に関する物権の一種であるから、その登記が第三者対抗要件となる。
抵当権の設定登記が対抗要件であるということの具体的意味は次のとおりである。
① 登記をした抵当権者は、一般債権者に優先して弁済を受けることができる。
② 抵当不動産を譲り受けた者に対して抵当権の効力を主張することができる。
③ 同一不動産上の他の担保権との優劣関係は、登記の前後によって決まる。
④ 同一不動産上の用益権との優劣関係も、登記の前後によって決まる。
抵当権設定登記は抵当権の成立要件ではなく、設定契約がなされると登記がなくても抵当権は有効に成立する。ただし、未登記の抵当権の実行は、容易ではない*。
* 抵当権の実行手続の開始には、抵当権の存在を証する公的文書の提出が必要となる(民事執行法181条1項参照)。
抵当権設定登記においては、抵当権の存在だけでなく、その被担保債権に関する情報*も公示の対象となる。抵当権は被担保債権に付従し、優先弁済的効力の範囲も被担保債権の金額によって定まるからである。
* 登記原因(発生原因)、債権額(元本額)、利息・損害金に関する定めなど。不動産登記法59
条・83条1項・88条参照。
抵当権は、同一不動産の上に複数設定することができる。その場合、各々の抵当権は登記の具備の時間的前後によって順位づけられる(373条)。
抵当権の順位は、抵当権者が目的物から優先弁済を受ける順番を意味する。
すなわち、目的物である不動産の競売によって得られた代金は、まず先順位の抵当権者への弁済に当てられ、その被担保債権の全部を弁済してまだ残余があるときに後順位の抵当権者への弁済に当てられる。
先順位の抵当権が弁済などによって消滅すると、後順位の抵当権の順位が当然に上昇する。これを順位上昇の原則という。
後順位の抵当権者は、先順位抵当権の登記の抹消を請求することができる。